鍼灸治療の適応症INDICATION
- 小雀斎漢方針灸治療院での鍼灸治療について
症状・疾患別に説明いたします。
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胃痛の鍼灸治療
胃痛(胃の痛み)は中医学では「胃脘痛(いかんつう)」とも言い、西洋医学における急・慢性胃炎、消化性潰瘍、胃痙攣、胃下垂、胃粘膜脱、胃神経症などの病気でよく見られます。
慢性胃炎や胃潰瘍をくり返す患者さんではヘリコバクター・ピロリという菌が胃粘膜に住み着いていることが多く、これはピロリ菌が除かれないとなかなか良くなりません。この点は、中医学よりも西洋医学のお薬の方が勝っています。また、近年は減少傾向にあるとはいえ胃癌のチェックは必要ですし、胃の痛みと思っていたら膵臓癌や慢性膵炎だったというようなこともあり得ます。しかし、ピロリ菌も潰瘍も無いのに胃痛が続く場合には、西洋医学では治療が難しいことも多いため、中医鍼灸・漢方薬治療をお勧めします。
最近多いのは心理的ストレスによる胃痛です。患者さんはご自身の胃痛がストレスから来ていると自覚している場合が多いようです。慢性的なストレスは肝鬱気滞という情志の鬱滞からくる気の停滞を生じますが、これが胃の動きを邪魔して胃痛を生じます(肝気犯胃)。このような患者さんの問題は「胃」にあるのではなく、中医学でいう「肝」にあるのです。
胃痛の鍼灸治療には「足三里(あしさんり)・中脘(ちゅうかん)・胃兪(いゆ)」などの腧穴(いわゆるツボ)の効果が高いと言われています。ストレスによる胃痛の治療はこれらの腧穴に加え「太衝(たいしょう)・合谷(ごうこく)」といった疏肝理気の働きを持つ腧穴へ鍼や灸を施し、心理的ストレスと胃の緊張を緩めるようにします。過食や暴飲暴食も胃痛を起こしますが、中医学ではこれを食積(しょくせき)と呼びます。このような患者さんの多くは胃熱をともなっていますから食欲が亢進して、また食べる、するとまた食積になり痛む、ということを繰り返すのです。このような胃痛には「内庭(ないてい)・建里(けんり)」などの腧穴を加え治療を行います。普段から冷たいものを飲み過ぎたり、生ものを食べ過ぎたりしている患者さん(過食生冷)は、胃が冷えてしまい胃痛を生じます。これを胃寒証といいます。「中脘」へ灸を施し、胃を温めて痛みを治します。
[参考書籍]
新世紀全国高等中医薬院校針灸専業創新教材 中医内科学.中国中医薬出版社
新世紀全国高等中医薬院校企劃教材 針灸治療学.中国中医薬出版社
この記事を書いた人
渡邉大祐(医学博士・はり師きゅう師)