鍼灸治療の適応症INDICATION
- 小雀斎漢方針灸治療院での鍼灸治療について
症状・疾患別に説明いたします。
知りたい症状をお選びください。
めまいの鍼灸治療
中医学におけるめまいとは
中医学においてめまいは「眩暈(げんうん)」「目眩(もくげん)」「眩冒(げんぼう)」などと呼ばれています。
眩(げん)
目がかすんで目の前が暗くなるもの。
暈(うん)
ぐるぐる回って見える、物が揺れ動いて見えるもの。
眩暈(げんうん)
眩と暈が同時に起きるもの。
目眩(もくげん)
目がかすんで頭がくらくらするもの。
眩冒(げんぼう)
ひどく頭がくらくらし目の前が暗くなるもの。
病因病機(発症のメカニズム)

眩暈の病因病機
慢性病や加齢・過度の性交渉などの腎を傷つける要因があると、腎陰や腎精が損傷します。腎精が損傷し足りなくなった病態を腎精不足といいます。脳は髄海と呼ばれ、髄がたくさん集まった場所と考えられていますが、この髄は腎精が形を変えて作られたものです。そのため、腎精不足となると髄が減少し、脳への滋養が足りなくなりめまいが生じます。
上述の機序により腎陰も不足します。腎陰が不足した病態を腎陰虚といいます。何らかの原因により体内に強い熱が発生すると、体内水分の消耗をまねき陰虚となります。体質により肝の水分である肝陰が不足した肝陰虚になる人もいます。腎陰虚と肝陰虚が同時に存在する病態を肝腎陰虚といい、肝陰・腎陰が共同で抑制していた肝陽の力が過剰となり強い熱が発生します。これを肝陽上亢といいます。肝陽上亢になると、熱により体内の気が上に昇って降りない状態となりめまいを生じます。
飲食の失調や慢性病・過労や過度の休養は脾の働きを低下させます。脾は食物の消化吸収を管理しており、気や血の原料となる後天の精を抽出する働きを担っています。そのため、脾の機能低下は気血の生成低下をまねき全身の気血不足を引き起こします。脳も気血の滋養を受けていますから、滋養が不足するとめまいが生じることがあります。
また、脾は全身の水分(津液)代謝の原動力の役割も担っています。脾の機能低下は津液停滞を引き起こします。中医学では津液の停滞により生じる病理産物を痰湿・痰濁などと呼んでいます。この痰濁が頭部や頚部に溜まるとめまいが生じます。
診察のポイント
1) 実証
断続的に強いめまいがおこる。
物を見ると目がグルグル回り、ひっくり返るような感じがする。
2) 虚証
持続的なめまい。
実証ほど強いものではない。
活動後悪化する。
めまいの鍼灸治療
めまい鍼灸治療の標準配穴(ツボの組合せ)
風池(ふうち)
頭顔面部の気機(気の流れ)を調整する働きを持ち、めまいをはじめ頭・顔の症状全般に効果があります。
百会(ひゃくえ)
頭部の気機(気の流れ)を調整する働きを持ち、めまいなど頭部症状全般に効果があります。
代表証型
1) 肝陽上亢
症状
めまい、耳鳴り、頭部の脹痛、怒ると増悪する。イライラして怒りっぽい、不眠、夢をよく見る、口が苦い、顔面紅潮または手足が火照り胸苦しい、寝汗、腰膝のだるさ、夢精などの症状を呈する。舌紅苔黄・脈弦数、または舌紅苔少・脈弦細数。
処方例
標準配穴+侠渓・太衝・太渓など
2) 痰濁
症状
めまい、頭が重くぼんやりする。食欲減退、悪心嘔吐(涎や痰が多い)、むくみ、雨天などの悪天候で症状悪化、痰が多いなどの症状を呈する。舌苔厚膩、脈滑数。
処方例
標準配穴+中脘・足三里・陰陵泉・豊隆など
3) 気血両虚
症状
頻繁にめまいが起こる。横になると軽減し、疲労で誘発する。顔面蒼白、唇や爪の血色が淡白、息切れ、話すのがおっくう、疲労感、不眠、動悸、食欲不振などの症状を呈する。舌質淡、脈細無力。
処方例
標準配穴+心兪・膈兪・脾兪・三陰交・足三里など
4) 腎精不足
症状
持続的なめまい、疲れると悪化する。足腰の無力感やだるさ、耳鳴や難聴、夢精、脱毛などの症状を呈する。舌淡、脈虚。
処方例
標準配穴+懸鍾・腎兪・太渓・足三里など
[参考書籍]
新世紀全国高等中医薬院校針灸専業創新教材 中医内科学.中国中医薬出版社
新世紀全国高等中医薬院校企劃教材 針灸治療学.中国中医薬出版社
この記事を書いた人
渡邉大祐(医学博士・はり師きゅう師)